動画広告を見た人が、その場ではクリックせず、数日後に会社名を検索して問い合わせた。BtoBでは珍しくない動きです。
このとき、クリック経由のコンバージョンだけを見れば、動画は「成果ゼロ」に見えます。逆に、広告管理画面の視聴後コンバージョンをすべて動画の成果だと考えると、今度は効果を大きく見積もる危険があります。
僕が大事だと思うのは、どちらか一方を信じることではありません。クリック、一定の視聴、表示だけの接触を分け、その後の商談品質まで同じ表で追うことです。
この記事では、Google広告のEngaged-view conversion(EVC)とView-through conversion(VTC)を例に、あなたの会社で使える「視聴から商談までの5列台帳」をつくります。Google広告の仕様は事実として、台帳の使い方と判断ルールは僕の実務上の解釈として分けて説明します。
「クリックされなかった」を一つにまとめない
まず、似ているようで異なる三つの経路を分けます。下表はGoogle広告の公式説明を、BtoB担当者が比較しやすい形に整理したものです。
| 経路 | 起点 | Google広告上の主な扱い | BtoBで読み取れること | 読み取れないこと |
|---|---|---|---|---|
| クリック経由CV | 広告をクリックした後にCV | Clicksとして区分可能 | 広告から次の行動へ直接進んだ | クリックだけで商談品質は分からない |
| EVC | 動画を一定時間視聴し、設定した期間内にCV | 「Conversions」「All conversions」に含まれる | クリック以外の動画エンゲージメント後にCVした | 動画だけがCVを生んだとは証明できない |
| VTC | 広告を見たが操作せず、設定した期間内にCV | 原則「View-through conversions」「All conversions」で確認 | 表示後に別経路でCVした可能性 | 広告を見なかった場合との差は分からない |
Googleの定義では、YouTubeのスキップ可能なインストリーム広告は10秒以上(10秒未満なら最後まで)、インフィード広告とShorts広告は5秒以上の視聴などがEVCのエンゲージメント条件です。条件は広告形式によって異なります。WebコンバージョンとオフラインコンバージョンインポートのEVC計測期間は、初期設定では3日です。設定はコンバージョンアクションごとに変更できます。
VTCは、広告を見たものの操作しなかった人が後でCVした場合の指標です。Googleは、ほかの広告とインタラクションした人のCVをVTCから自動的に除外すると説明しています。また、キャンペーンの種類によってはVTCが「Conversions」列に入らず、レポート専用になる点にも注意が必要です。
つまり、クリックなし=関心なしでも、視聴後CV=動画だけの成果でもありません。
なぜBtoBほど「視聴後」を別に見る必要があるのか
BtoBの検討には、社内共有、上司への説明、予算確認、比較資料の収集が入ります。動画を見た本人がその場でフォームへ進むとは限りません。会社名で再検索したり、別の担当者が後から問い合わせたりするため、クリックだけでは動画の役割を取りこぼします。
一方で、表示後に問い合わせた人が、もともと指名検索する予定だった可能性もあります。広告管理画面のアトリビューションは、設定したルールに沿って接点へ貢献を配分する仕組みであり、広告がなければ起きなかった成果を自動的に証明するものではありません。これは公式仕様から僕が置く実務上の留保です。
ここで議論を「動画は効いた/効かなかった」にすると、次の改善が止まります。見るべき問いは、より具体的です。
- どの動画を、どの程度見た人がCVしたのか
- そのCVは資料請求、相談、採用候補商談のどこまで進んだのか
- 視聴後CVが増えたとき、指名検索や直接流入にも変化があったのか
- クリック経由と視聴後で、商談化率や失注理由に違いがあるのか
使うのは「視聴から商談までの5列台帳」
広告管理画面とCRMを別々に見るだけでは、判断が分断されます。週次の確認では、次の5列を一枚に集めます。
| 列 | 記録する内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 1. 接触種別 | Click / EVC / VTCを分ける | EVC |
| 2. 配信条件 | キャンペーン、動画ID、広告形式、対象 | Demand Gen / V03 / Shorts / IT責任者 |
| 3. 計測条件 | CVアクション、計測期間、確認日 | 相談予約 / EVC 3日 / 10月29日確認 |
| 4. 事業結果 | 問い合わせ、適格、商談、受注、失注理由 | 問い合わせ4、適格2、商談1、受注未確定 |
| 5. 次の判断 | 継続、対象変更、訴求変更、停止など | 視聴は残し、導入条件の説明を追加 |
この表のポイントは、接触種別と事業結果の間に「計測条件」を置くことです。窓の長さや主要CVの設定が違えば、同じ配信でも数字は変わります。期間を変更した週は、効果の変化と設定変更を混同しないよう必ず記録します。
15分で始める記入手順
- Google広告でレポートを「広告イベントタイプ」別に分け、ClicksとInteractionsを確認する。
- VTCは専用列も確認し、Click・EVCと同じ数字として足さない。
- コンバージョンアクションごとに、Click・EVC・VTCの計測期間を台帳へ転記する。
- CRM側では問い合わせ数だけでなく、適格、商談、受注、失注理由を同じ週に追記する。
- 数字が動いたら、設定変更、配信量、対象、動画の差のどれで説明できるかを一つずつ切り分ける。
オフラインコンバージョンを使う場合、GoogleはEVCとの照合のため、コンバージョン発生日時から14日以内にアップロードする必要があると説明しています。30日の計測期間を設定していても、アップロードが14日を超えるとEVCとして記録されないため、日次または定期的な連携が必要です。
仮例:視聴後CVを足し上げず、商談の質で読む
次は説明用の架空例です。実在企業の成果ではありません。
ある業務システム会社が、同じ動画を4週間配信したとします。
| 接触種別 | 管理画面上のCV | CRMで確認できた適格リード | 商談 | この時点の解釈 |
|---|---|---|---|---|
| Click | 4 | 2 | 1 | LPへの直接移動は少ないが、商談につながる接触がある |
| EVC | 9 | 4 | 2 | 一定視聴後のCVが多い。どの動画・対象で増えたかを分解する価値がある |
| VTC | 13 | 3 | 1 | 認知接触の可能性はあるが、因果の断定は避ける |
この三つを単純に合計して「動画から26件」とは言いません。重複排除や計測ルールはプラットフォーム側で働きますが、BtoBの意思決定では、さらにCRMの適格性と商談結果を重ねて見ます。
たとえばEVCの適格率がClickより高くても、すぐに予算を移すのではなく、対象、動画、計測期間を固定して次の配信で再現するか確かめます。VTCだけが増え、適格リードが増えないなら、動画の視認性よりも配信対象やCV定義を疑います。
比較するときに固定する条件
AIで動画の案を増やせるほど、比較条件は崩れやすくなります。次の項目を固定しないまま、動画AとBの良し悪しを決めないでください。
固定するのは、対象オーディエンス、配信面・広告形式、主要CVアクション、計測期間、予算と配信期間、CRMの適格基準です。対象が違えば視聴と商談の質が変わり、広告形式が違えばEVCの成立条件も変わります。資料ダウンロードと相談予約では事業価値が違い、計測期間が長いほど拾うCVが増える可能性があります。営業側の適格判断が揺れると、広告側へ返す信号も揺れます。
AIは集計、タグ付け、週次レポートの下書きを減らせます。ただし、どの問い合わせを適格と呼ぶか、何を次に検証するかは、人が事業条件を見て決める仕事です。僕は、その判断に使う時間を増やすためにAIを使いたいと考えています。
数字が出た後の四つの分岐
| 観測結果 | 先に疑うこと | 次の一手 |
|---|---|---|
| ClickもEVCも適格商談も増える | 成果の再現性 | 対象と訴求を固定し、別期間で再検証 |
| EVCは増えるが適格商談が増えない | CV定義、対象、動画後半の説明 | 導入条件・対象外条件を動画とLPへ追加 |
| VTCだけ増える | 配信量、窓の長さ、既存指名需要 | 短い窓との比較、地域や対象を絞ったテスト |
| どの接触も弱い | 冒頭の顧客場面、対象、オファー | 動画量産を止め、顧客の困りごとから仮説を作り直す |
ここまで分けると、動画の役割を「直接獲得」だけに限定せず、それでも売上から離れすぎない判断ができます。
この設計にも限界がある
EVCやVTCには、計測できないブラウザやデバイス横断、同意設定、Cookie制限などの影響があります。Googleも、クロスサイトCookieを許可しないブラウザのVTCは報告できないと明記しています。
また、少数の高単価商談では、率の比較が不安定になります。営業期間が長い会社では、配信4週間だけで受注まで結論を出せないこともあります。広告管理画面とCRMの顧客を完全に一対一で結びつけられない場合もあります。
したがって、この台帳は「動画が原因だと証明する表」ではありません。過小評価と過大評価の両方を避け、次に確かめる条件を決める表です。
最後に:見るべきは視聴数ではなく、判断のつながり
動画広告で本当に知りたいのは、何人が見たかだけではありません。
どの顧客場面に、どの訴求を、どの形式で見せると、問い合わせの質が変わるのか。その問いに答えるには、Click・EVC・VTCと商談結果を同じ台帳で追う必要があります。
もしあなたの会社が、動画広告、LP、計測、営業結果を一つの検証にまとめ、自社の売れる条件を実市場で確かめたい段階なら、30-DAY AD TESTも次の選択肢になります。企画・LP・動画広告・計測などの準備期間は案件条件で変わり、その後30日間の広告配信で運用・分析・改善を行います。費用は30万円(税別)、広告費は別途15〜30万円が目安です。受注や成果、30日での結論を保証するものではありません。
まずは広告管理画面を開き、Click・EVC・VTCが同じ言葉で混ざっていないか、主要CVと計測期間が事業の意思決定に合っているかを確認してみてください。
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参考資料
- Google Ads Help「About Engaged-view conversions」(公開日表示なし、2026年10月29日確認)
- Google Ads Help「About view-through conversions」(公開日表示なし、2026年10月29日確認)
- Google Ads Help「About conversion windows」(公開日表示なし、2026年10月29日確認)
- Google Search Central「Creating helpful, reliable, people-first content」(公開日表示なし、2026年10月29日確認)

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[…] クリック以外の接点をどう数えるかは、BtoBの視聴後CVを商談までつなぐ計測設計で整理しています。本稿では、その計測値を「広告による純増」と混同しないための次の段階を扱います。 […]